日本に来て言葉や文化の壁に悩んでいる方へ伝えたいこと-フィリピン人スタッフの経験談-【後編】

2021年4月20日

前回に続き、子どもの頃に来日してから現在まで、日本で生活している当事務所のフィリピン人スタッフ「サンタアナ アンジェリー(ニックネーム:エンジェル)」に、日本に来てから、苦労したこと、変わったきっかけ、日本で暮らすうえで大切に思うことなど、経験談を日本人スタッフの桂からインタビューし、その内容を前編・後編に分けてお伝えします!

前編は、来日してからの苦労、日本で暮らす決意をしたこと、恩師との出会いなど。 後編は、通信高校や初めてのアルバイトへの挑戦~現在に至るまでのお話です!

通信高校への挑戦。仲間とダンスをする楽しみ

インタビュアー桂

夜間中学の恩師には卒業後も相談してアドバイスをもらっていたの?

インタビュイーエンジェル

はい。恩師からCKC(※)への参加を誘ってもらいましたが、子どもがいたため最初は参加できずにいましたが、ことあるごとに恩師は連絡をくれて、高校を卒業することが今後、生活していく上でいかに影響が大きいかを教えてくれました。母も高校を卒業してほしいと思っていました。

恩師と両親と、働きながら高校に通えるかなど相談し、母が子どもの世話をサポートすると言ってくれました。そして、20代で子持ちでも仕事をしながら勉強ができる通信制高校に行くことにしました。通信制は毎日登校する必要はありませんが、宿題やテストがあって、ちゃんと点数を取らなければならなりません。CKCで勉強のサポートをしてもらうことにしました。

※CKC:日本人学生が外国籍生徒に学習サポートをしたり、ダンスのイベントに出るなど国際交流を目的とした団体。CKCのホームページはこちら

インタビュアー桂

子どもの面倒を見ながらアルバイトと通信高校の勉強と、大変だったよね。大変だけど頑張れた理由は?

インタビュイーエンジェル

自分に子どもができて、守るために少なくとも高校は卒業した方がこれからの生活や子どもに教えてあげられることも増えると思いました。もう今更遅いという思いもあったけど、もっと年をとってから学校に行く人もいる。後から後悔したくない。お母さんを安心させるためにも高校を卒業し、親孝行もしたいと思いました。

とても大変でしたが、頑張れたのは子どもがいたからです。親として、いま頑張るべき、甘えられないと思いました。そして無事、通信高校を卒業することができました。

インタビュアー桂

CKCで勉強だけでなく、ダンスやイベントや楽しいことをみんなでできたのもよかったよね。私は応援する側だったけど、好きなことを笑顔で思いっきりしているみんなはかっこよかった!

インタビュイーエンジェル

子どもができてからは、ダンスをすることから遠ざかっていましたが、仲間たちとダンスをすることはとても楽しい時間でした。

初めてのアルバイト。日本で働くことの壁

インタビュアー桂

夜間中学を卒業後、色々なアルバイトに挑戦したのだよね。
コンビニのアルバイトではどんなことに苦労して、どう乗り越えていったの?

インタビュイーエンジェル

まず、アルバイトに応募しても、外国籍という理由で落ちてしまうことが大変でした。電話で会話している時は良くても、名前を言うと「あ、外国人なのね」と言われ落ちてしまうこともありました。やっと受かり働きはじめましたが、丁寧な言葉で接客しながら、素早く作業をすることに苦労しました。挨拶の仕方、敬語、商品を揃える、など、日本は真面目で細かいと実感し、それに慣れるまで苦労しました。

先輩から厳しく怒られることやお客さんからクレームを言われることもありましたが、周りをよく見て、相手によって対応を合わせることを学んでいきました。フィリピン人だからマイペースだよね、など言われて悔しかったこともありましたが、自分を抑えて嫌な顔をせずに、とにかく一生懸命働いて、自分がいなくなったら困るくらいになって見返してやる気持ちで頑張りました。周りをよく見て行動することで、相手に気を遣い、丁寧に話すことが前よりもできるようになりました。そして、後輩の指導を任せてもらえるようになりました。

インタビュアー桂

認めてもらえた時はどんな気持ちになった?
大変でもここまで頑張って続けられたのはどうして?

インタビュイーエンジェル

他にも日本人の同僚はいましたが、「あなたはよく見て動いてくれるから」と後輩の指導を任せてもらえた時、認めてもらえたと思って涙が出るくらい嬉しかったです。認めてもらえるまでは大変ですが、それまで我慢して頑張ってきてよかったと思いました。大変な時、頑張れたのは、私の負けず嫌いの気持ちと、子どもを守るため、という気持ちが大きかったです。

インタビュアー桂

日本人だから、外国人だから、じゃなくて、エンジェル自身の働きぶりを認めてもらえてよかったね!

インタビュイーエンジェル

その後、後輩に教えるのに、リーダーにならないかと店長さんに言ってもらいましたが、子どもがいると急に休ませてもらうこともあり、遠慮しました。最終的に7年くらい働いた経験は大きく、感謝しています。

日本で家族と暮らしたい。ビザで苦労したこと

インタビュアー桂

エンジェルは二人目のお子さんを妊娠した時、フィリピンにいる旦那さんを日本に呼び、日本で家族と暮らしたいと思って、ビザ申請について当事務所代表の小池さんに相談したのだよね?

インタビュイーエンジェル

はい。恩師と小池さんに相談しました。最初は観光ビザで申請しましたがダメでした。そこでアドバイスをもらい、私が一度、フィリピンに戻りフィリピンで籍を入れました。その後、配偶者ビザで再申請しました。その時も、入管にどれくらい本気で日本で暮らしたいと思っているか気持ちを伝えるのが良いとアドバイスをもらい、書類と一緒に、フィリピン国籍の旦那と私が母国ではなく日本で暮らしたい理由、日本に来てからの計画を手紙にしました。

そして、入管からビザがおり、旦那が日本で暮らすことができるようになりました。今、家族で一緒に日本ですごせているのは、恩師と小池さんのおかげで本当に感謝しています。そのきっかけもあり、当事務所でスタッフとして働かせてもらうことになりました。

日本で暮らしてよかったこと

インタビュアー桂

今まで色々なことがあったけど、今は日本で暮らしてよかったと思う?
日本で生活したうえでフィリピンと日本の違いや、それぞれの良さをどう感じる?

インタビュイーエンジェル

日本にきてよかったと今は思います!フィリピンは貧富の差が大きく、大学を卒業しても仕事を見つけるのは難しいです。生活するためのお金を得ることは大変です。比べると日本は生活しやすいと思います。子どもができて日本は病院が整っていることの有難さを実感しました。例えば、フィリピンの病院では輸血するとき、病院は輸血を用意してくれなくて自分で用意しなくてはなりません。

でも、フィリピンの明るくてラフな雰囲気は、自分らしくいられる心地よさを感じます。日本の細やかなマナー、先輩後輩の上下関係などはフィリピンにはあまりありません。

日本にきて言葉や文化の壁に困っている人に向けて伝えたいこと

インタビュアー桂

日本にきて言葉や文化の壁に困っている人に向けて、伝えたいことは?
同じように悩んだ経験があるエンジェル自身が今までを振り返ってみて、大切だと思うことを教えてください!

インタビュイーエンジェル

言葉や文化の違いが大きいと苦労することが多いと思いますが、自国の文化も忘れずに、日本文化との違いを認識して、少し合わせてみる気持ちになるといいかもしれません。

日本にいても同じ国籍の人だけで集まってしまうことがよくあると思います。でも、仕事など生活していくためには日本人と関わることは必ずあります。日本で暮らしていきたいなら、自分から一歩を踏み出す、コミュニケーションをとろうとすることが大事だと思います。受け身ではなく、どう自分が接するかで相手の反応は変わってくると思います。

そして、つらいときは、遠慮せずに相談するといいと思います。外国籍の人のために相談できる場所はあるので探してみて、区役所、ボランティア団体、など、一人で悩まず頼ることも大切だと思います。

違いをマイナスにとらえないで、嫌な気持ちを忘れられるくらい良いところを見つけよう、自分の生活を楽しくするにはどうしたら良いか、を考え、ちゃんと向き合うと、良い出会い、良い出来事に巡り合えると思います!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

お一人お一人状況は異なるため、参考になるところ、ならないところがあると思いますが、この経験談が少しでもお役に立てたら嬉しいです。自分にとって心地よい選択ができるよう祈っています。お困りのことがございましたらお気軽にご相談くださいね!

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