「経営・管理ビザ」は取得が難しい?要件と注意点、不許可事例付き

2021年8月23日

「今まで日本企業に勤めていたが、独立して自分の会社を起業したい」、「海外でやってきたビジネスを日本でも展開するために会社をつくりたい」など、外国人の方が日本で事業の経営・管理業務に従事することができるように設けられたビザを「経営・管理ビザ」といいます。今回は経営・管理ビザの取得をお考えの方向けに、要件や注意点を不許可事例とともにお伝えします。

経営・管理ビザの活動要件とは?

入管法別表第1の2に活動内容が定められています。

『本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動』

入管法別表第1の2

詳細はこちらから出入国在留管理庁のホームページでご確認ください。

貿易は一例のため事業の内容は問わず、「事業を経営する」または「事業の管理をする」の2つのカテゴリーがあります。以下、活動要件(在留資格該当性)を詳しく説明します。

① 以下のいずれかの活動カテゴリーに該当すること


【経営活動】
事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行、監査の業務に従事する役員としての活動。(代表取締役、取締役、監査役などの役員)

【管理活動】
部に相当するもの以上の内部組織の管理業務に従事する職員としての活動。
(部長、工場長、支店長などの部門を統括する職員)

また、事業内容に制限はありませんが、その事業が適正であり、経営管理活動が安定的に継続して行われる必要があります。そのため、経営管理ビザの在留資格該当性として、「事業の適正性」および「事業の安定性・継続性」が求められます。
② 事業の適正性


事業の適正性とは、例えば、以下の点などが求められます。

・許認可等の必要な事業を行う場合は,必要な許認可を取得する。
(例:飲食業を経営:飲食店営業許可など)
・職員を雇用して事業を行う場合は労働保険や社会保険に加入する。
・適正なルートで取引を行う。
③ 事業の安定性・継続性


決定する在留期間の途中で事業が立ち行かなくなる等、在留活動が途切れることが想定されるような場合は、経営・管理の在留資格に該当する活動を行うものとは認められません。そのため、事業が安定して継続的に営まれるものと客観的に認められる事業計画書の内容が重要になります。

<注意点>事業計画書の内容
販売予定の商品やサービス、取引予定先、売上高、利益、経費等、の計画内容を具体的に盛り込み、合理性があり実現可能であるか、取引先との契約書があるかなどをチェックされます。また、事業の安定性・継続性を裏付ける情報として、以下のような実績がある場合はこれらの資料も併せて提出することをお勧めします。

・申請人に事業の経営経験がある場合:謄本等、事業の経験があることを疎明する資料
・日本で事業を経営し成功している者からの協力を得られる:どのような協力が得られるかを説明した理由書等
・大学等で経営に関する勉強をした場合:卒業証明書及び成績証明書の写し

以上の活動要件のほかに、経営管理ビザは上陸基準省令に適合していなければなりません。続いて、上陸基準省令について説明します。

経営・管理ビザの上陸基準省令とは?

以下の3つの要件が定められており、該当する必要があります。

① 事業所の確保


「事業を営むための事業所が本邦に存在し確保されていること」が必要です。
以下2点を満たす必要があります。

・専有の独立したスペースが確保されていること
・事業所として機能するに足る物的・人的設備が確保されているということ

<注意点>シェアオフィス、自宅兼事務所など
他の事業者との使用部分や、居住スペースと事業のために使用するスペースを明確に区分する必要があります。パーテーションで区切っただけでは足らず、入口が異なる、生活スペースを通らず事務所にいくことが出来るなど、物理的に区分される必要があります。
② 事業規模


事業の規模が、以下のいずれかに当てはまる必要があります。

1.本邦に居住する2人以上の常勤従業員を確保していること
2.資本金又は出資の総額が500万円以上であること
3.1又は2に準ずる規模であると認められるものであること

1.本邦に居住する2人以上の常勤従業員を確保していること
経営管理活動に従事する外国人以外に、日本に居住する常勤の職員が2名以上勤務していることです。この常勤従業員は、日本人、特別永住者の他、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格をもって在留する者でなければなりません。

2.資本金又は出資の総額が500万円以上であること
事業が法人形態で営まれる場合を前提としており、経営管理ビザを取得しようとする外国人本人が必ずしも出資しなければならないわけではありません。他の者が出資して設立された場合でも構いません。

3.1又は2に準ずる規模であると認められるものであること
1.2のいずれにも該当しない場合に、1又は2に準ずる規模であることを要件とするものです。

<注意点>資本金500万円の調達方法の証明
自分で貯めたお金なのか、誰かから出資されたお金なのか、どこからどのように準備したかの証明が必要です。

●海外から送金する場合
海外送金記録と、送金が入った通帳の写しの提出が必要です。

●海外からお金を持ち込む場合
100万円以上の現金を持ち込む場合には、税関で申告し、申告証明書を取得してください。申告は義務になるため、申告せずに100万円以上を持ち込むことは違法となるので、入管での申請時に不利になります。

●親や友人等から借用する場合
親や友人から借用する場合には、その関係を証明する公的な書類(家族関係証明書、出生証明書等)の書類が必要です。また、金銭消費貸借契約書、借用した方が500万円を貸すことが出来るだけの資力を証明する書類(課税証明書、預金通帳の写し等)が必要になります。

※見せ金を排除する観点から、500万円の出どころについても入管では審査されます。出資金の500万円をどのように準備したのか具体的に立証する必要があり、仮に立証できない場合には経営管理ビザが取得できません。
③ 管理の場合、事業の経営又は管理について3年以上の経験を有し(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

実務経験と雇用条件の証明が必要になります。

経営・管理ビザの在留期間

経営管理ビザの在留期間は、1年、3年、5年の他、4ヶ月、3ヶ月の合計5種類があります。3ヶ月の在留期間を付与されることはほとんどなく、また4ヶ月の在留期間を付与されるケースは限定的な場面です。そのため、経営管理ビザでは、1年、3年、5年のいずれかの在留期間が付与されることが一般的です。

4ヶ月ビザとは

1年、3年、5年のビザと違い、在留資格の許可が出てから会社設立するビザになります。日本に協力者がいなくても、日本国外にいながら会社設立や経営管理ビザの申請までできるので、許可が下りるまでのコストを無駄にするリスクが少ないのがメリットです。

ただし、注意点として 4ヶ月後の更新で必ず許可が出るわけではありません。不許可になることもあり、あくまで1年の経営管理ビザを取得するための通過点です。4ヶ月ビザが取れたとしてもその後、住む場所の確保、事務所の確保、銀行口座開設、会社設立など、次の更新期限までの4ヶ月の間に急ぎ準備が必要です。そのため、心配な場合は在留期間1年で全部準備してから申請する方が一般的です。

経営・管理ビザ取得までの流れと期間

<全体の流れ>

全体の計画設計→事業所の確保(個人名義での契約)→会社設立手続き→税務署等への開業届出の手続き→許認可取得→事業所について会社名義へ名義変更→経営管理ビザ申請のための準備(証拠書類の収集や事業計画書作成)→入国管理局へ申請→審査→追加書類等の徴求→許可・不許可の通知

※注意点

・会社設立し、経営管理の許可が出るまで、会社の経営を行うことはできません。例えば、技術・人文知識・国際業務から経営・管理への変更申請をしている間は、従前のビザである技術・人文知識・国際業務で日本に滞在をしていることになっている為、会社の経営や管理をすることはできません。

・会社設立時に、資本金を個人口座に入金し、法務局で会社設立手続をするために、資本金が入っている通帳の写しを提出します。法務局での会社設立手続前又は手続き後に、生活費等でお金が必要であり資本金を引き出してしまう方がいますが、経営・管理のビザを取得し、会社の経営ができるまで、資本金を使うことはできません。但し、事業所の家賃や水道光熱費等の経費として使うことはできます。

取得までの期間>

全体プランの設計から会社設立に1ヶ月くらい、経営管理ビザの申請書類の準備に1ヶ月くらい、申請から許可通知まで3ヶ月から6ヵ月くらいとすると、全体で5ヶ月から8ヵ月くらいの期間が目安になります。但し、申請内容や過去の在留状況等によっては、1年以上かかるケースもあります。

経営・管理ビザ必要書類

経営管理ビザを申請する場合の必要書類については、所属機関(会社形態の場合は会社、個人事業形態の場合は個人)に応じ、カテゴリー1から4に分けて定められています。

<区分(所属機関)>

<カテゴリー1>

① 日本の証券取引所に上場している企業
② 保険業を営む相互会社
③ 外国の国又は地方公共団体
④ 日本の国・地方公共団体認可の公益法人
⑤ 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)
⑥ 一定の条件を満たす企業等

<カテゴリー2>

前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収額が1000万円以上ある団体・個人

<カテゴリー3>

前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)

<カテゴリー4>

カテゴリー1から3に該当しない団体・個人

<共通する必要書類>

① 在留資格変更許可申請書
② 写真(縦4cm×横3cm、3ヶ月以内に撮影されたもの)
③ パスポート及び在留カードの提示

<カテゴリー1に該当する機関に所属する場合の必要書類>

① 四季報のコピー又は日本の証券取引所に上場していることを証明する書類のコピー
② 主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書のコピー
③ 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(例えば、補助金交付決定通知書の写し)
④ 上記「⑥一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例えば、認定証等の写し)

<カテゴリー2及び3に該当する機関に所属する場合の必要書類>

① 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表のコピー(受付印のあるものの写し)

<カテゴリー3及び4の必要書類>

① 当該法人の登記事項証明書
 ※法人登記が完了していないときは、定款その他法人において当該事業を開始しようとしていることを明らかにする書類のコピーを提出してください。
② 定款のコピー
③ 株主名簿のコピー
④ 法人設立届出書のコピー(税務署、市区町村、都道府県に対するもの)
⑤ 事業計画書
⑥ 既に取引先と商談等を開始している場合は、取引先の名刺、合意書など事業を継続的・安定的に行うことができることを補強する資料
⑦ 事業所の賃貸借契約書のコピー(法人名義)
⑧ 事業所の写真
 ※ビルの外観、入り口、事業所ポスト、看板、事業所内の写真
⑨ ア)資本金が500万円以上の事業の場合
   500万円以上の資本金の出所を明らかにする書類
  イ) 常勤従業員2人以上勤務する事業の場合
   国籍、在留カード番号、給与等を示した従業員名簿等
⑩ 役員報酬を決定した臨時株主総会/社員総会議事録のコピー
⑪ 許認可が必要な事業を行う場合は、許可証や免許証のコピー
 ※申請時に許可証等の準備ができない場合は、許認可の申請書のコピー

※既存の会社の場合には、上記の書類に加えて以下の書類を提出する必要があります。
① 直近年度の決算書
② 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

以上が経営管理ビザの申請における必要最小限の必要書類となりますが、事業を開始するに至るまでの経緯により準備しなければならない書類は異なってきます。

また、上記の書類の中でも「500万円以上の資本金の出所を明らかにする書類」及び「事業計画書」は、経営管理ビザを申請するにあたり要となる書類ですので、入念な準備が必要となります。

経営・管理ビザ更新時の注意点

更新時の注意点と在留期間3年を取得するポイントをお伝えします。

<更新時の注意点>

① 活動内容
・それまで経営者として活動してきたかどうかが
・当初予定していた事業計画と大幅に内容が変わってしまった場合

② 会社の経営状態
・特に2期連続で赤字になっている場合は要注意
・事業の売上があるか
・債務超過がないか(純資産がプラスになっているか)

③ その他
・会社が、法人税、法人事業税、法人住民税などの税金を納めているか
・本人が、所得税、住民税を納めているか

<3年ビザ取得のポイント>

最初から3年を取得できるケースはほぼなく、1年からスタートします。

更新時には決算書の内容が重要で、売上規模について少なくとも年商1000万以上の方が、経営管理ビザの更新で3年や5年の長期ビザを取得している印象です。繰越欠損金がある場合には、3年や5年の経営管理ビザの取得は難しいと思われます。

経営管理ビザの更新審査では、単年の数字のみならず、これまでの経営実績が見られます。経営管理ビザの要件を満たしており、財務状態が健全であることが求められています。

<3年ビザが出やすいケース>

・売上・利益・納税額が安定している。(直近3年間安定していることが望ましい)
・日本人や永住者ビザ保有者を複数名雇用しており、社会保険に加入している。
・国や自治体等から仕事を受託した実績がある。
・中堅規模以上の既存法人の役員(代表取締役等)に就任する場合
・中堅規模以上の既存法人が出資した会社の役員になる場合

経営・管理ビザ不許可事例とアドバイス

最後に、不許可事例とワンポイントアドバイスをご紹介します。

不許可事例①

日本で有限会社を設立し、総販売代理店を営むとして申請を行ったが、提出された資料から事業所が住居であると思われ、調査したところ、2階建てアパートで郵便受け、玄関には社名を表す標識等はなかったもの。また、居宅内も事務機器等は設置されておらず、家具等の一般日常生活を営む備品のみであったことから、事業所が確保されているとは認められなかったもの。

<ワンポイントアドバイス>

事業所は独立している必要があるため、原則住居を事業所にはできません。

但し、自宅兼事務所とする場合には、下記の条件が必要になります。(※戸建ての場合)

1階が事務所又は住居スペース、2階が事務所又は住居スペースあれば可能です。玄関に入ってすぐ事務所という形態が望ましいです。2階を事務所にする場合、住居スペースを通らず2階の事務所へ行くことができることが条件となります。2階へ外部階段から上がれるような構造や、玄関を開けてすぐに2階へ上がれるような造りであれば許可が下ります。1階と2階の玄関が別々であればなおよいです。

事務所は独立している必要があるので、住居スペースを通らなければ事務所へ行けないような間取りは、独立して事業所が確保されていることにならず、不許可となってしまいます。

玄関や入り口には看板や標識を設置し、事務所内には事務機器等の必要な設備や備品を設置し、いずれも写真を撮り、事務所の見取図と一緒に入管へ提出します。

また、公共料金等の共用費用の支払いに関する取決めもポイントです。
事業で使用したものか日常生活で使用したものか明確にしておく必要があり、入管からも取決めに関する疎明資料を求められます。

不許可事例②

当該企業の直近期決算書によると、売上総損失(売上高-売上原価)が発生していること、当期損益は赤字で欠損金もあり、また、欠損金の額は資本金の約2倍が発生していることから、当該事業の継続性を認められなかったもの。

<ワンポイントアドバイス>

債務超過で、欠損金の額は資本金の約2倍発生しており、事業を存続させるにあたり非常に厳しい財務状況にあり、継続性がないと判断されてしまっています。債務超過になってしまった理由、今期の売上見込及び売上見込の根拠資料や改善事業計画書を作成し、今後の見通しや継続的に経営が可能であることを疎明する資料及び改善事業計画書を一緒に提出する必要があります。

経営管理ビザは、数ある就労ビザの中でも取得が難しいビザです。

上記でも説明をした通り、事業所、資本金、書類作成等、何に注意してやればいいのか気を付けることがたくさんあります。経営管理ビザは他の就労ビザと異なり、学歴や職歴要件がなく、資本金を準備し会社を設立することができれば、ビザの取得が可能と考えていらっしゃる方もいます。

しかし不正にビザの取得をする方もおり、入管では、在留資格の該当性、事業所の確保、事業の安定性等、1つ1つ厳しく審査をするため、不許可になってしまうこともあります。

ただし、一つずつ準備すべきものを確実に行えば取得することが可能なビザです。全ての準備をご自身で行うことは大変なため、不明点などありましたらお気軽にお問合せください!

ページトップへ